【読書メモ】リバタリアンが社会実験してみた町の話

リバタリアンが社会実験してみた町の話』原書房、2022

リバタリアンが社会実験してみた町の話 - 原書房 (harashobo.co.jp)

 

突如町に押しかけてきた自由主義者たちの振る舞いと、その結果として公共予算が削減されて道路などインフラ整備や消防署・図書館などのサービスが低下してしまった話なのだが、結果として熊が増えて大変になったという話でもある。

原題は”A LIBERTARIAN WALKS INTO A BEAR”で「熊」が含まれている。翻訳書としては熊を打ち出すよりリバタリアン/自由市場主義者を入れた方がいいという判断なのね。まあ、そうかもしんない。

綿密な取材で登場人物が多く、しかも全員アメリカ人(当然)のため当方は覚えにくく、またボリュームもあるのだが実に興味深く読めた。小説のように登場人物一覧がほしかった。

 

日本でも各地でシカやイノシシが出没して農業被害が増加しているという。うちの地区も少し前まで盛んに「イノシシが出た」「サルが出た」と防災行政無線で放送していた(そういえば最近聞かないが、出なくなったわけではないと思うけど何故だろう)。

 

全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(令和2年度):農林水産省 (maff.go.jp)

1. 鳥獣による令和2年度の農作物被害については、被害金額が約161億円で前年度に比べ約3億円増加(対前年2%増)、被害面積は約4万3千haで前年度に比べ約5千ha減少(対前年10%減)、被害量が約45万9千tで前年に比べ約2千t増加(対前年0.4%増)しています。

2. 主要な鳥獣種別の被害金額については、シカが約56億円で前年度に比べ約3億円増加(対前年6%増)、イノシシが約46億円で前年度に比べ約0.7億円減少(対前年1%減)、クマが約5億円で前年度に比べ約0.6億円増加(対前年14%増)、ヒヨドリが約4億円で前年度に比べ約2億円減少(対前年35%減)しています。

上記プレスリリースによると、シカ!イノシシ!そしてクマ!ヒヨドリ

こんなに被害が発生しているとは知らなかった。

 

クマによる人的被害も大きいようだ。

クマに関する各種情報・取組 || 野生鳥獣の保護及び管理[環境省] (env.go.jp)

クマ被害対策に関する関係省庁連絡会議が開催されており、資料が分かりやすくまとめられている。これを見るとクマによる人的被害は件数100件程度、死亡者数は数人程度のもよう。

 

米国の基礎自治体のあり方(税額の決定など)は日本のそれと相当に異なるようではあるが、日本が本書のような結末に至らないことを祈る。